「A子さんの恋人」/近藤聡乃
新刊が出るたびにあれこれ言いながら読むのが楽しいシリーズ。
近藤聡乃さんのことは、昔NHKの番組で紹介されていた短編アニメーション作品「電車かもしれない」で知ったせいか、モノクロの、どこかおどろおどろしい作風、というイメージがあったのですが、エンターブレインからでていた「うさぎのヨシオ」でああ作者は漫画が好きなんだな、と改めて思い、そこからの「A子さんの恋人」でかなりイメージが変わりました。
- 作者: 近藤聡乃
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/エンターブレイン
- 発売日: 2015/06/15
- メディア: コミック
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だからこそ、付き合うならA太郎かA君か、自分に似てるのは誰か、みたいな話で盛り上がるんだろうな、と思います。
しかもこの作品の登場人物は、ひとことで「こういう人」と言い難い人が多い。いいところもあれば悪いところも容易に浮かぶ(もしくは悪いところばかりに見えて、実はいいところもある)。
それがフィクションとしてはすごく新鮮で、でも身近にいるかも、と思わせるポイントなのかなと思います。
例えば単純にいい人として出てくる「田中君」がなぜ単純にいい人なのかというと、たぶん登場人物たちに興味を持たれていないからなんですよね(まあ実際単純にいい人な可能性もあるけども)。
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物語は、「懐に入り込む男」であるA太郎と、「懐の深い男」であるA君との狭間で揺れる、主人公のA子、という構図を中心に描かれる。
ここでまず読者としてはA太郎かA君か、ということで悩むハメになるのですが、こっちは「断然A君でしょー!」(私はA君派)って決めてるのに、A子はいつまでもふらふらしているので、だんだん諸悪の根源はA子、みたいな気持ちになってくる。
そもそも2人はなんでA子が好きなわけ? とか酒を片手に詰め寄りたい。
そして話しを聞いているうちにA太郎のよさにも気付いてしまって、ああ人の色恋話って面白いな…というのが3巻まで読んだ印象です。
作者のインタビュー*1では、ラストはA子が「選ぶ」ようになると語られていたので、どう終わるのか、完結までやきもきしながら待ちたいと思います。
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ただ上のインタビューを読んでひとつ意外だったのはA太郎の
「君は僕のことそんなに好きじゃないからだよ」
という台詞について、作者は
A太郎は、本当はA子に自分をもっと好きになってほしくて言ったんだと思いますよ。
と語られていたこと。
A太郎にそういう側面があったとは思わなかった!というのが正直なところだったので、これからまだまだ登場人物たちの、知らなかった側面が出てくるのかと思うと本当に楽しみです。
それでも私はA君派ですけどね…!(A君はA君で厄介な人だと思いますが)
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