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ichinicsの主にマンガ日記

崖際のワルツ/椎名うみ

青野くんに触りたいから死にたい』の1巻が最高に面白くて気になっている椎名うみさんの短編集。
四季賞受賞作の『ボインちゃん』とその続編的な『セーラー服を燃やして』、それから表題作の『崖際のワルツ』の3編が収録されています。
青野くんに触りたいから死にたい』を読んだときに、作者はどの程度意識的に、主人公(刈谷さん)のずれた感じを描いている方なんだろうと気になっていたのだけど、この短編集を読んですごく腑に落ちたように思った。

『ボインちゃん』と『セーラー服を燃やして』に共通して登場する内藤さんは、自分のことを「空気読めない藤」と自称している。
『ボインちゃん』は、そんな内藤さんの「空気を読まなさ」に主人公(まおちゃん)が救われるお話。
そして、『セーラー服を燃やして』は、内藤さんの空気読まなさをそのまま受け入れているまおちゃんに内藤さんが救われるお話になっている。起きている出来事自体には恐ろしいところもあるんだけど、2人の関係をみるととても幸せな裏表に思える。
そしてその関係性を描くうえでの進化形ともいえるのが表題作『崖際のワルツ』なのだと感じました。

高校の演劇部で出会った「美少女だけど空気の読めない大根」と、彼女を演出しようとする演劇好きの少女。
そんな2人が演じる2人劇のやりとりがめちゃくちゃ面白い。
お互いを利用しているだだった関係が、舞台上で変化していく過程がものすごくスリリングかつ魅力的でした。

そして、この場面にこそ、『青野くんに触りたいから死にたい』の面白さの原点があるように思う。
作者は「刈谷さん」を演出している。でもそれは決して彼女を見世物にしようとしているのではなく、『崖際のワルツ』の2人のように、刈谷さんとワルツを踊っているのがきっと作者自身なのだと思った。

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