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ichinicsの主にマンガ日記

「春の呪い」1,2巻(完結)/小西明日翔

作者の方のTwitterやpixivをみていて気になって買った作品。
1巻を読み終えた時点でめちゃくちゃ続きが気になっていて、24日の発売日に即買いに行きました。

春の呪い: 1 (ZERO-SUMコミックス)

春の呪い: 1 (ZERO-SUMコミックス)

春の呪い 2 (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)

春の呪い 2 (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)

主人公の夏美と妹の春は、けして円満とはいえない家庭で、身を寄せ合うようにして生きてきた仲の良い姉妹だった。しかし妹は亡くなり、自分と妹の婚約者が残された――というところから物語がはじまります。
夏美にとっての春は「唯一の家族」だった。だからこそ、その妹を奪った存在として妹の婚約者である冬吾を疎ましく思ってもいた。しかし、妹が亡くなったことをきっかけに、「春と冬吾がデートで巡った場所を訪れる」という形で交際をはじめ、春への罪悪感に苛まれながらも、それぞれに、これが終わらなければいいと願い始めるところで1巻が終わる。

読んでいる間ずっと、つらい、おもしろい、でもつらい…という気持ちを行き来していた。
それは2巻になっても変わらないのですが、読み終えてみると、1巻の時点で丁寧にたてられたプロットがあったのだろうな、と感じました。
例えば、夏美の妹への依存的な愛情に対してダメ押しのように突きつけられる言葉などは、本当に辛くて一度本を閉じてしまったくらいです。でもそれを示唆する描写は冒頭にすでに描かれていて、そのように登場人物たちの言動の答え合せをしていくような展開もすごく丁寧だなと思いました。

物語としてももちろん、すごく面白いのですが、この『春の呪い』の魅力はやはり漫画であるところにある、と思います。
主人公の夏美は特に表情豊かに描かれているのだけど、その表情の動きと感情の齟齬が積み重なっていき、それがやがて行動に結びつくという展開にすごくぐっとくるんですよね。これはデフォルメされた表情ならではの演出だなと思います。
それからモノローグも魅力的。

まるで性交渉の直後のような感覚だったが
妙な後味の悪さもあった
それは死んだ元婚約者に対する罪悪感なのだが
そのときはよく理解できなかった

そして恐らくそのときが人生で初めて
他人に対して罪悪感を感じた瞬間だった
1巻p80

このモノローグがあるからこそ、冬吾という人の印象が決まるし、直接的には描かれなくても、やがて来る2人の関係の変化を示唆する伏線にもなっていると感じました。
漫画というおは絵と言葉と構成で出来ているものなんだなということを改めて感じる作品で、作者の今後の作品がますます楽しみになりました。

こちらで冒頭2話が読めます。
comic.pixiv.net