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ichinicsの主にマンガ日記

「青野くんに触りたいから死にたい」1巻

年始に第1話がTwitterなどで話題になっていたのにつられて読んだときに、冒頭から1話の終わりまでみっちりおもしろくてすごいなと思ったのですが、そんな「青野くんに触りたいから死にたい」の1巻が、ものすごく、面白かったです。
とりあえずこの第1話を読んで面白かったら、1巻を買って損はないと思います。まだweb公開されるのでぜひ…!

www.moae.jp

第1話の時点で、切実さゆえのおかしみと切なさが溢れていて、数ページごとに笑いながら切なくなる、という複雑な精神状態に追い込まれるのですが、1巻まるごとその勢いが失速しないのがほんとうにすごい。
1話だけをみると、この2人はお互いのことをあまりよく知らないままのようにも感じるんですけど、1巻を読むとちゃんと幽霊と人間として関係を積み重ねていくので、ちょっとずれているところはあるけど、人を好きになるのって多かれ少なかれこんな風にちょっと変になることなのかもしれない…という気がしてきます。
特に、触れたいという願望を実現させるために生み出されたこの枕技の描写はすばらしいと思う。

この第1回では笑ってしまったけれど(この後の展開が天才だと思う)、繰り返されていくうちに、それが何であっても「触れた」と錯覚したいっていう気持ちのいじらしさが伝わってきてぐっときます。

1巻には新たなキャラクターが2人登場するのですが、どちらも主人公たちと同じくとても真剣だからこそのおかしみを伴いつつ、物語の速度を損なわない強いキャラなので、これからどう展開するのか、とても楽しみです。

2巻は10月発売予定ですが、来月には短編集もでるみたいなので楽しみ!!

崖際のワルツ 椎名うみ作品集: アフタヌーン

崖際のワルツ 椎名うみ作品集: アフタヌーン

「広告会社、男子寮のおかずくん」/オトクニ

広告会社の男子寮に暮らす4人の男性が毎週金曜日の夜に「それぞれが作ったメシを持って皆でそれをかこんで食べるだけの会」を行っている…というお話。
おかず担当、お米担当、汁物担当、箸やすめ担当の4人に分かれているので1話につき1献立のアイデアがもらえるのも楽しいし(もちろんレシピも載っています!)、男子ごはんらしい大雑把さや豪快さがあるのも気軽に試せていいです。
何より、4人が同じ会社に勤めているからこその、お仕事漫画としての楽しさもある。仕事のトラブルや悩み事があっても金曜日の食事で挽回して気分転換する感じ、すごく楽しそうで読んでて憧れてしまいます。

広告会社、男子寮のおかずくん (クロフネコミックス)

広告会社、男子寮のおかずくん (クロフネコミックス)

その中で、既に私のこの夏定番になっている&twitterなどでもためしてみました報告が多いヒットレシピが、4人の中で一番物腰柔らかな南郷さん(箸休め担当)のエピソードに登場する「五味」です。
経理部に所属している南郷さんが、後輩の女の子を励ます場面…という導入シーンもとてもいいし、その後、5月中旬という季節柄もあって少々お疲れ気味の皆のために披露するレシピが五味。
揚げ豚に5種類の薬味をぶっかけるというとても試しやすいレシピなうえに、これ、めちゃくちゃ応用が利くんです。
活用レシピもたくさん載ってたけど、私が気に入ってるのは特典ペーパーに書いてあった、焼き油揚げに五味をかけるというもの。
楽だしおいしいし薬味どっさりとれて身体にも優しい感じがします。

主人公のおかず君(西尾和という名前で略しておかず君)の、仕事上での努力が報われる場面でお話が終わるのもぐっときた…。
まだまだこの4人のお話が読みたいので、続刊もあったらいいのにな…と思っています。
おすすめです!

こちらで試し読みもできます…!
comic.pixiv.net

作者のオトクニさんはpixiv作品も愛読していて、その頃からとにかく食関連の漫画がおいしそう&幸せで最高に好きだったので、このような形でオリジナル漫画が読めたのがとても嬉しいです!

『悪魔を憐れむ歌』1巻/梶本レイカ

『コオリオニ』で知った梶本レイカさんの新連載作品。
『コオリオニ』が話題になった時によく言われていたように、香港黒社会ものや韓国ノワール映画が好きな人にはたまらない作品ではないかと思います。

悪魔を憐れむ歌 1巻 (バンチコミックス)

悪魔を憐れむ歌 1巻 (バンチコミックス)

『悪魔を憐れむ歌』は、『コオリオニ』と同じく北海道警察を舞台に、人体が箱型に折りたたまれて発見された未解決連続殺人事件、通称「箱折連続殺人事件」を追う主人公の物語。
一匹狼な主人公がそうとは知らずに真犯人に接近してしまうまでが第1巻で描かれているので、謎解きというよりは主人公がこれから巻き込まれていくであろう運命や、真犯人の目的があかされていく過程が今後の主題なのだと思います。

『コオリオニ』以降に過去作品もいくつか読んだのですが、たぶん作者は正義/悪、正気/狂気などが表裏一体となった、人のどうしようもなさ、業のようなものを描こうとしている人なのだと思う。その境目が反転するような瞬間の描き方が強烈で、正直1巻の段階ですでに読みながら思わず本を閉じたくなるような場面もあった。
けれど、この物語を作者がどう描いていくつもりなのか、それは絶対に読みたいと思う強い引力のある作品でもありました。

ホラー、サスペンス、ミステリーのどの要素がメインのお話になるのかはこれから次第だと思いますが、どれも構成の上手さが物語の面白さに如実に反映されるジャンルだと思うし、『コオリオニ』も過去と現在を行き来する語り口が、幾度読んでも完璧な編集だと感じたので、そういう点にも注目して読みたいなと思っています。
何より、『コオリオニ』で一度活動休止、という話も出た中で、こうして新連載が読めるのは本当にありがたいことだと思う。作者のサイト(http://tito.kilo.jp/)にあるメッセージもぐっときます。
続きが本当に楽しみです。

ichinics.hateblo.jp

『ハッピーバースデー』/ymz

ymzさんはpixivで知ってから大好きで、商業で活動されるようになってからも単行本を楽しみにしている作家さんです。
とにかく絵が好き!なのもあるし、お話がとてもやさしい…。
この『ハッピーバースデー』は、大学時代からの友人3人の人生のある一時期を描いた群像劇。
BL雑誌での連載作品ですが、メインの3人にはゲイもノンケもいて、彼らの恋愛と友情が優先順位のつけられない重要なこととして扱われている作品です。
会話の間みたいなところを丁寧に描く作者さんなので、物語のテンポはゆっくりしていて、ひとつのシーンが終わったあとの余韻みたいなものを感じながらゆっくり読み進めるのが楽しい。
この本はオープニングとエンディングの場面が重ねられていて、まるで1本の映画をみたような気持ちになる。
このシーンのカラー口絵が入っているのも嬉しかった…。
今後の作品も楽しみにしています!

ハッピーバースデー (Canna Comics)

ハッピーバースデー (Canna Comics)

お話の雰囲気的に、紀伊カンナさんとか絵津鼓さんの作品が好きな人は好きなんじゃないかな…? と思います!

『地球のおわりは恋のはじまり』1~4巻/タアモ

夜、布団の中で突然「少女マンガが読みたい!」という気分になってkindleで一気買いした漫画です。
今は布団の中でも本が買えるんですからすごい時代になったものですね…。

「いいことがあったらその分悪いことが起きる」と思っている主人公(真昼)が、かっこよくて優しい男の子(里見君)になぜか言い寄られて、「こんなにいいことがあったら地球が終わる」と思うというところから始まるお話。
真昼は、自分と同じ顔なのに快活で人気者な真夜と比較されて「じゃない方」といわれた過去があり、コンプレックスを持っている。
でも里見君が自分を選んだのにはちゃんと理由があって…というところで2人は恋人同士になります。
そして恋人同士になった後に、コンプレックスの原因でもある妹が里見君とおなじバイト先で働くことになって…等のトラブルが起こる…というあらすじ。
基本的にメインの登場人物は皆いい人で、行動のすれ違いによって誤解が生じ、それを解決していく、という流れになっているところがなんとなく今の少女マンガっぽい気がします。
両思いの状態でいろいろ起こる漫画は昔からあるけれど、起こるトラブルがわりと平和なので読んでいて安らぐ……。
自分はそんなに少女マンガをたくさん読んでるわけじゃないですけど、「俺物語」とか「となりの怪物君」も同じ系列ですよね。
そして恋人ができても解決されてはいない真昼のコンプレックスが解決されるところに漫画の最終的なハッピーエンドがくるのかな、と思います。

余談ですが里見君はちょっとpdlの今泉君に似てる気がします(見た目)。
かっこよくて、優しいんだけど少し悲しそうなので、里見君がおもいきり笑えるラストになるといいな…みたいな気持ちで安眠できました。

『1122』1巻/渡辺ペコ

2013年に完結した『にこたま』に続いて“夫婦”のあり方について描くお話になると思われる『1122』(と書いていいふうふ、と読む)1巻を読みました。
『にこたま』は、個人的には「過渡期にいる女性たちの物語」だと思っていて、子どもから母親へ、彼女から妻へ、と移り変わる過渡期にいる女性達の間にいる男性が、自分もまた移り変わらなければならないと決断をするお話だったかなと思います。
特に子どもを持つ、持たない、持てない、でも……という部分について作者が真摯に考え抜いた先の物語だなと感じたのが印象的でした。

『1122』は、仲がよいけれどセックスレスで、夫は妻公認の不倫をしている…という夫婦のお話。
妻の性欲はずっと「凪」の状態だったのだけれど、夫が不倫相手に恋をしていることを感じ始めてから、徐々にそのパワーバランスが変わっていく…というのがすごくリアル。
許可しているのは自分だ、というところに安心していたけれど、「でもさ、彼らの恋愛を いちこがドライブできるわけじゃないからね」って言われるところ、ああ恋愛って生き物だなあと思って怖くなった。
そもそも、その「公認不倫」が始まったのは、夫婦の間にある愛と性欲の結びつき方のズレが原因だった。

そうだよ「セックスくらい」のはずだった
のに
めんどくさがってないがしろにしているうちに
どんどんややこしく特別なものになってしまった
p93

逃げるは恥だが役に立つ』は契約結婚から恋愛結婚へと移行する過程で恋愛を免罪符にせずに互いの役割分担を話し合うというところが画期的なお話だったと思いますが、『1122』は、恋愛結婚から契約結婚に以降する課程で失われたものが妻と夫で異なっていた…という話になるのかもしれないなと思っています。

わたしが見たいのは
生きたいのは
“めでたしめでたし”のその先
そのずっと先なのです

という1巻ラストの言葉がとてもよかった。その先がどう描かれるのか、続きを楽しみにしています。

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「それでも町は廻っている」16巻(完結)/石黒正数

約10年間、発売と同時に単行本を読み続けていた『それでも町は廻っている』の最終巻を読みました。
長い連載を締めくくるのって、きっとすごく難しいと思うのですが、この16巻はとても、“それ町”らしい終わり方だったと思います。
真田君への片思いについて、ついにタッツンが歩鳥に物申すという友情(打ち合ってお前けっこうやるな的な)展開があり、進路について悩むことで仄かにこの生活の終わりと物語の外にある未来が提示され、ほろっとさせたところでコメディを貫き、でも最後に夢を見せてくれる。

第1巻の発売は2006年ですが自分の日記を見返してみると私が読み始めたのは2007年からのようでした。
1巻を買った場所はよく覚えている。当時の勤め先最寄りの書店2階に平積みになっていてポップを見て、面白そうだなと思って買ったのでした。そのとき隣に並んでいたのが『未来日記』だったのも何か印象に残っている。
1巻の感想を見返してみると「ドタバタコメディ」なんて書いているけれど、10年たって最終話を読み終えてみると、その印象はかなり違う(と思って2巻からの感想見返したら毎回「1巻読んだときの感想が嘘みたい」って書いてたけど…)。
コメディでありつつ、ミステリーだったりSFだったり、1話ごとに様々なアイデアが詰め込まれていて、読後の印象もそれぞれに違う。特に――って毎回書いてるのですが、9巻に収録されている「大人買い計画」というお話がとにかく好きで、そのときの感想を見ると

ミステリーから幻想文学になってSFで締める。星新一さんのショートショートを思わせる贅沢な短編でした。
http://ichinics.hatenadiary.com/entry/20110906/p1

って書いてあって、そんな風に、ほんと色んな読み方ができる、お花見弁当のようなシリーズでした。

長い連作作品は「日記」に似てるなと思うことがあります。
エピソードを誰の視点でどんな風に切り取るかで見え方は全く違うし、登場人物はほぼ一定だけど、起こる出来事は毎日違う。そしてその連なりを見ているうちに、その町や、人物のイメージが、掘り出されるように露になっていく。
新刊が出るたびに感想を書いてたわけじゃないけど、それなりに「この巻のこの回が面白かった!」とか日記に書いてあるのもアルバムみたいで、つまりこの10年はいずれ、丸子商店街の喫茶シーサイドに通ったなぁと、思い出す10年なのだと思います。

最終巻でも触れられているとおり、掲載順序は時系列順ではない…ということも知られていますが、いつかその時系列順に読み直してみたいなとも思っている。それで新たな発見があるのかないのか。なくてもそれはそれで。
石黒正数さんのこれからの作品もとても楽しみにしています。

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