「コオリオニ」上下/梶本レイカ
ネットで評判を見かけて気になって手に取った作品。
読み終えてしばらく余韻が抜けず、その表情や仕草からあり得た筈の可能性を拾いたいという気持ちになって幾度も読み返しました。
- 作者: 梶本レイカ
- 出版社/メーカー: ふゅーじょんぷろだくと
- 発売日: 2016/02/24
- メディア: コミック
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- 作者: 梶本レイカ
- 出版社/メーカー: ふゅーじょんぷろだくと
- 発売日: 2016/02/24
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90年代の北海道を舞台にヤクザと警察が手を組むことになるサスペンスBLですが、雰囲気としては香港黒社会もの(ジョニー・トー作品など)に近い気がします。
1990年代、警察庁は相次ぐ拳銃事件の対策として全国的な銃器摘発キャンペーンを始める。全国の警察は厳しいノルマを設けられ、それをこなす為に警察がヤクザと手を組むという点数稼ぎの出来レースが横行した。(略)
〈あらすじより〉
このような背景があり、警察官の「鬼戸」は、ヤクザの「八敷」を情報提供者「エス」にスカウトする。
お互いの思惑に乗ったフリをしつつの騙し合いだったはずが、次第に共犯関係へと変化していく様子は読んでいてゾクゾクするし、その変化の過程に互いの心が遅れてついていくような描写がとても巧みで、八方塞がりの局面でも、この2人の幸せを願わずにはいられなかった。
最初は心を明け渡すことなく身体を繋いでいた2人の根底に共通するものが明らかになるにつれ、2人は「同じバケモン」であるお互いを唯一無二の存在として守るようになる。
けれど守るものができるということは同時に死を恐れぬ無敵ではなくなるということでもあるんですよね。
最終話を読み返すたびに、また最初から読んで別の未来を想像してしまう。
黒社会ものとしても、ラブストーリーとしてもすごく読み応えがあって、忘れられない作品になりました。
物語の大事な場面で繰り返される「エッタ」(北海道の方言で、鬼ごっこなどで「捕まえた」の意味)という言葉の、幼児を思わせる響きが読み終えてみるとひどく切ない。