「花井沢町公民館便り」(完)/ヤマシタトモコ
2055年、シェルター技術の開発事故に巻き込まれ、生命体の出入りができなくなってしまった小さな町、花井沢町を舞台に描かれる連作短編シリーズ、完結巻です。
- 作者: ヤマシタトモコ
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2016/09/23
- メディア: コミック
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公民館が比較的きれいである間は、閉ざされた中でも希望をもって生きている人のお話が多いのだけど、この完結巻では1巻第1話から連続して描かれている「希」という女の子が最後の一人になるときが描かれている。
【以下内容に触れています】
最後の一人になったことと、町内の建物に倒壊の恐れがある、ということで、最終話では、希のために無人ロボットを使って家を建てるという案が持ち上がる。
希の恋人であり「外」の人間でもある総一郎と一緒に暮らすことが可能になり、それは希望のある話にも見えるのだけど、
境界の外にいる、自由な人間の生活を目の当たりにすることはやはり残酷で、つまり隔離された生活の不自由さや行動を制限されること以上に辛いことを知ってしまった瞬間でもあったのだと思った。
変化していく町の姿は「これ以上変化できない」という辛さでもある。
最終巻になってようやく描かれる、それが起きる直前に、町の外で「花井沢出たいんだよねまじ」と語っている女の子の様子など、まるでエンドロールを見ているかのようなとりかえしのつかなさがあって、
最終話まで読み終えた後に1巻を読み返してみて、1話の時点で予言されていたことを思い出し、本当に丁寧に組み上げられた物語だなと感じました。
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しんどいお話でしたが、巻末の2ページ漫画にそれを描く、というのが作者らしいな、と思った。